新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う県の緊急事態措置を受け、松阪市は4月21日、大型連休に県外から多くが訪れる登山の自粛を呼び掛けた。一方、新規事業「まつさか香肌イレブン」プロジェクトを進め、同27日には11座をだいたい選んだ。コロナ収束後に向け、「鈴鹿セブンマウンテン」に並ぶ縦走ルートを整備していく。
同市飯高町宮前の道の駅「飯高駅」は北に見える局ケ岳(1028メートル)や三重・奈良県境の高見山(1248メートル)などの登山拠点になっているが、感染防止のため臨時休業を余儀なくされている。
同駅入り口には「不要不急の外出(登山・ハイキングなど)は自粛し、感染症拡大防止にご協力ください!」「大型連休期間の都道府県をまたいでの移動は、感染拡大の恐れがあるので自粛しましょう!」と掲示している。
国内の主要登山団体は「都市を離れ、清浄な空気と自然を求めての登山やクライミング行為は、出先の方々への感染を広め、山岳スポーツ愛好者自身が感染するリスクを高める」と登山の自粛を求める共同声明を出した。遭難時の救助者への感染や、切迫する医療への負担の懸念もある。
高見山から大台町の県最高峰、日出ケ岳(1695メートル)まで続く県境の台高山脈へは平成30年に3万7550人が訪れた。同町大杉の大杉谷登山センターから日出ケ岳へ至る大杉谷登山道は年間約7千人が利用するが、今年は桃の木山の家と粟谷小屋が臨時休業。先月17日に開いた同登山道の安全祈願祭では祝詞でコロナ終息も願った。
■ ■
新事業「まつさか香肌イレブン」は2カ年計画。櫛田川上流域の香肌峡県立自然公園を囲む山々から11の山を選び、登山道へのアクセスや駐車場の情報を整理し、縦走・周回ルートを調査整備していく。主要な山が十余りある他、「イレブン」の響きから11山とした。
県内では「津10山」「亀山7座」「わたらいセブンマウンテン」などがあり、登山ガイドを作ったり、登山道を整えて魅力を発信している。
「東紀州10マウンテンの会」は平成11年、鈴鹿セブンマウンテンに倣って東紀州の10山を登って選ぼうと発足し、途中で東紀州の山を年10回登る趣旨に変え、延べ8600人以上が参加。解散を機に山行記録「東紀州の山々 〈東紀州10マウンテンの会〉18年の記録」を出版している。
■ ■
まつさか香肌イレブンは先月27日、飯高山岳会や山岳救助隊の意見を聴いて選定した。確定は飯南町の烏岳(545メートル)、白猪山(819メートル)の両山と、飯高町北側に連なる局ケ岳、栗の木山(1066メートル)、三峰山(1235メートル)、高見山の四山に加え、同町西・南側に並ぶ桧塚(1402メートル)、明神岳(1432メートル)、池木屋山(1395メートル)、迷岳(1309メートル)の4山。残り一つは絞りきれず決着を持ち越した。
鈴鹿セブンマウンテンはロープウエーのある御在所岳(1212メートル)が有名だが、最高峰は滋賀県の雨乞岳(1237メートル)で、標高1000―1200メートル級。まつさか香肌イレブンは紀伊半島の「屋根」となっている台高山脈を抱え、標高1000―1400メートルと多彩だ。
飯高山岳会が作成した「松阪飯高の山ガイドマップ」には1000メートル以上が37山もある。「台高山脈周辺の険しい山々と、高見山、三峰山、局ケ岳のゆったりした山に二分されている」「本格的な登山者は迷岳、池木屋山や台高山脈の尾根歩きを楽しんでいる」と解説している。
局ケ岳―高見山や高見山―池木屋山を結ぶ稜線を泊まり掛けで歩く登山者もいる。山から山へ峰伝いに歩く縦走・周回ルートを特長にまつさか香肌イレブンをアピールしていく。
登山自粛を呼び掛ける竹上真人市長は感染収束を見据え、「山に関する情報提供は十分でなく、鈴鹿山脈までの知名度には至っていない。山々と豊かな自然を登山客に楽しんでもらえるようにする」と張り切っている。