伊勢新聞

2020年4月28日(火)

▼プロ野球読売巨人軍の長嶋茂雄終身名誉監督の語録と言えばいずれも記憶に残る言葉ばかりだが、単に長嶋語録と言われてすぐ脳裏に浮かぶのは「社会党(現・社民党)が政権を取ったら野球、野球って言ってられるかどうか」だ

▼6大学野球のホームラン王として鳴り物入りで巨人に入団。たちまちスターの座に上り詰め、不動の地位を築いた3年目で、物議をかもす発言として取りざたされ、子ども同士でも議論を交わした。それぞれ親の受け売りに違いないのだが、そんなバカなことがあるかという主張をああでもない、こうでもないと言い合った

▼国民的スポーツだった野球が、政権の交代などで廃止になってたまるかという思いが大人から子どもまで貫かれていたが今、新型コロナウイルスの拡大で、選抜高校野球に続き全国高校総体が中止。夏の全国高校野球も開催が危ぶまれている。プロ野球、Jリーグ、も大相撲も先が見えない

▼スポーツの〝絶対的帝王〟のごとき五輪でさえ1年延期という決定の先行きは不安。社会を根底から揺るがすようなことが起これば、それが戦争や自然災害などの直接的な暴力、猛威ではなくても野球、スポーツなどやっていられるかどうか。長嶋氏は自身の寄って立つ野球というものについて、政権交代を引き合いに、いかにはかない存在かを持ち前の野生のカンでかぎ取っていたのだろう

▼オリ・パラに続き、スポーツのビッグ大会中止に伴い選手の競技人生ばかりか人生設計にも影響が出始めていることが伝えられている。その深刻さはむろんスポーツ選手ばかりではない。