伊勢新聞

2020年4月24日(金)

▼亀山市で昨年10月、ブラジル国籍の五歳男児が暴行死した事件で同居のペルー国籍女性が起訴された。同居のメキシコ国籍男性も、男児の兄への暴行の疑いで逮捕されている。児童相談所が、いずれの事件にも関与していないらしいのは、児相としてはほっと一安心か、気づかなかったことにじだんだ踏んで悔しがるところか

▼外国人児童の虐待死については3月30日、3年前の四日市市の事件について「県児童虐待死亡事例等検証委員会」が報告書を出したばかり。外国人家庭への課題などに踏み込まなかったのは「問題意識を持っていた。なかなか文字化するのは難しかった」(委員長・村瀬勝彦弁護士)

▼関係機関があなた任せで危機意識が乏しかったなど、やはり同居男性に重篤な被害を受けた平成22年の鈴鹿市の事例そっくり。要保護児童対策地域協議会にもかけていなかったのはむしろ後退。検証委も文字にするのが忍びなかったか

▼死亡男児は兄とともに血縁関係のない男女に育てられていた。人間関係の濃密な南米の社会らしいが、だから虐待も起きやすいのかもしれない。かつての日本もそうだった

▼人間の脳が類人猿より飛び抜けて大きくなったのは、社会の構成単位が膨らんだためと山極壽一京大総長。育児などを共同する必要からコミュニケーション力を高めるため脳が発達したというのだ。しかし近年の情報革命で家族や共同体は崩壊。個人優先のサル社会に逆行しているという

▼ネット通販、オンライン教育―新型コロナウイルス禍は、それを劇的に押し進める転機になるのかもしれない。