伊勢新聞

2020年4月22日(水)

▼「気をつけて」「気をつけて」―津市郊外のコンビニで、レジの店員と客が離れ際、声を掛け合った。鈴木英敬知事の危機感を待つまでもなく、じわじわと新型コロナウイルス感染者が増え、県内初の死者が出た四日市市で、所属していた事業所がクラスター(感染者集団)発生対象とされたことに県民の危機感は浸透している

▼「感染者の関係者宅に石が投げ込まれ、ガラスが割られる被害があった」(県幹部)という。嘆かわしいことだが、危機感の裏返しでもある。「事実に基づく冷静な対応」を求めるのはいいが、「事実」が分からないから基づきようもない。人権侵害や誤った情報の拡散がよくないことは確かでも、当人は真実を知らせているつもりかもしれない。「人の口に戸を立てられない」は古今東西、人の世の真理でもある

▼偽情報に対抗するには真実の情報の提供しかない。疑問などの差し挟む余地の少ない正確な情報を素早く提供してほしいと、県には要望したくなる。県関係の医療福祉施設では21日から新しく設置したテントで外来患者らの検温を始めた

▼伊勢市立伊勢総合病院は10日からに比べ、ずいぶん遅い出動ではある。知事の危機感とのチグハグ感が否めない。カラオケボックスなど一部店舗に休業要請をしたことに異論はないが、県の感染者の実態や分析を踏まえた防衛策なのかどうか

▼協力金は、休業を促すための「給付」で、事業者への「補償」ではないという。工夫の結晶ということか。外出自粛に特に「強いメッセージ」がなかったが、の拡大防止と連動していることを願う。