伊勢新聞

2020年4月6日(月)

▼五輪メダリストが参加した鈴鹿市での練習会での参加者が91人と聞いた時はどうなることかと思ったが、接触者のうち陽性は1人だけだったことに、いくぶんなりともほっとした。最悪の事態は逃れたようだ

▼無症状者が感染を広げるとされ、陰性から陽性に転じることもあるという。初めて体験する姿なきウイルスの恐怖は、しかし、安心できる状況には遠い。東京から来ているもう1人の感染者の情報は、何一つ明らかにされていない。不安と県への不信は県民に高まっていると見て間違いなかろう

▼風評被害を防ぐか、県民の恐怖心を少しでも減らすか―県の情報提供は2つの間で揺れ動いている。練習会での接触者のうち、県外居住者が10人という数字は4日初めて公表されたのではないか。県民の不安を少しでも軽くしようという行為が理由なく後回しにされたことになる

▼施設を閉じたり、学校再開の時期を遅らせたり。練習会は県内に大きな傷跡を残したが、県民の心の傷口もまた、浅くはない。外出を控えることから、逆に外出が怖くなって引きこもりとなり、うつ状態を発症した県民もいる。「コロナうつ」だと余裕のあるだけまだ軽症だが、県の情報操作で重症にしてはなるまい

▼景気の落ち込みは鳥羽市が県内最大という。市は市内の旅館ホテル約75件を対象に市民限定の特別宿泊キャンペーンを開始した。宿泊代金1人5千円を割り引く。厳戒態勢ののバイキング会場は連日満員。ほかにも、市は弁当サービスの利用などを呼びかける

▼自粛の「ムード」だけは吹き飛ばしたいという意向だ。