伊勢新聞

2020年4月2日(木)

▼だまされたと言っては語弊がある。県に対する見方が甘すぎると言われたら返す言葉もない

▼鈴木英敬知事が海外渡航自粛を求めたのは先月5日。「感染が確認された県内在住者の2人が共に海外に渡航していたことを踏まえ」と語った。カンボジアなどから帰国した2人目が確認された翌日だった。8都道府県への出張自粛要請を呼び掛けたのは同30日で県外からの来県者2人に感染が確認された日だった

▼「来県者2人が感染していたことを踏まえ」とは言っていない。8都道府県への状況が深刻さを増していると説明されたが、当然結びつけるべきだった。志村けんさんの訃報の衝撃もあり、知事の呼びかけは転ばぬ先のつえ、先取り対策と受け取られかねないニュアンスで書いたことが悔やまれる

▼認識は翌日一変する。休校解除に前向きだった鈴鹿市が一転延長へ。来県者が陸上の五輪メダリストで、同市での練習会に参加。未就学児を含む91人と接触していた。自家用車で来県し翌日陽性と判明して入院という前日発表とは緊張感がまるで違う

▼練習会から4日を経ている。主催者が「適切な対応がなされていなかった事実を痛感」。指導者の雰囲気は周囲に伝わる。規制緩和を主導してきた末松則子市長もじくじたる思いがないか。そして鈴木知事

▼クルーズ船患者の県内受け入れを報道陣の指摘で明らかにした時、公表基準について「感染拡大の恐れがあった場合は(県民の予防、外出自粛のため)情報は積極的に公表していく」。守られたか

▼「国の動きをみて」という対策の枕詞も一考が求められる。