伊勢新聞

<まる見えリポート>主産業打撃で緊急支援策 新型ウイルス禍の伊勢志摩観光業

【施設の臨時休業が相次ぎ閑散とする鳥羽市内=鳥羽市鳥羽一丁目で】

世界的に感染拡大を続けている新型コロナウイルス。感染者こそまだ確認されてはいないが、各種レジャーの自粛ムードが広がる中で観光を主産業とする三重県の伊勢志摩地域にも大きな影響を与えている。

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伊勢市によると、伊勢神宮内宮・外宮を合わせた総参拝者数は2月が前年同期比約3%減の71万820人、3月(1―22日)が同約34%減の35万8765人と、共に減少。3月の市内観光消費額推計は同34・1%(約19億3700万円)減収となる、37億4300万円を見込んでいる。

内宮前におかげ横丁を運営する伊勢福(伊勢市宇治中之切町)によると、3月の客足は昨年より3割弱程度落ち込むという。観光バスなど団体客のツアーが軒並み減る一方で、マイカーを利用した少人数客の割合が増加。また春分の日を含む3連休では、重症化を懸念してか高齢者の割合が減り、比較的若い世代の客層が目立った。

同社の広報担当者は「アジア圏を中心に海外の観光客はほとんど見かけなくなったが、元から目立って多い場所ではないのでその点では影響は少ないかもしれない。ゴールデンウイークも控えているので何とか収まってほしい」と話した。

鳥羽水族館(鳥羽市鳥羽三丁目)は今月21日、臨時休館から約20日ぶりに営業を再開した。3月は例年春休みと相まって多くの利用客が期待できる時期で、昨年は約7万人が来館。今年はそのほとんどを閉館した。企画広報室の中村文哉室長(32)は「感染の現状を考えると仕方ないが苦しい面もあった。精いっぱい安全の実現に努力して、休館する前より楽しめる環境を作りたい」と話した。

臨時休館を設けずに営業継続を選択したミキモト真珠島(鳥羽一丁目)でも、団体予約のキャンセルなどが相次いだ。施設利用の約2割が外国人で、今年も中国の春節に期待を寄せていたが、2月の入り込みは全体で昨年より3割減、外国人割合では7割減となった。

同真珠博物館の井上達夫課長(55)は「休館した方がという意見もあったが、(密閉しない)開けた施設で比較的対応できると考えた。鳥羽に宿泊の方が行く場所がないのも困るだろうという点も含め総合的に判断した」と話す。

鳥羽・小浜・安楽島・池の浦の一部地区28事業者が集まる鳥羽旅館組合の副理事長で吉田屋和光(堅神町)の吉田一喜社長(54)は「団体予約のキャンセルで人件費を抱える大手ほど苦しい状況。5割減収というところも聞く」と話す。

鳥羽市によると、3月の宿泊客による観光消費額推計は対前年比33・3%減、約14億4521万7780円の落ち込みになる見込みという。吉田社長は「企業の持続には入りを図り、出(いず)るを制してキャッシュフローを確保する必要がある。入りが図れない以上、本来(公的支援策に)すがってはならないとは思うがお願いできる支援はお願いするしかない」と話す。

鳥羽市と志摩市は4月から、それぞれの市民や市民を代表とする5人までの団体を対象に、市内の宿泊施設利用者に一泊5千円を補助する緊急支援策を打ち出した。一方で両市共に施設ごとの利用上限は設けていないため、営業力の強い施設に利用が一極集中する可能性があり、公平性の観点からは疑問符が残る。

鳥羽市観光協会副会長で、無人島カヤックツアーなど各種エコツアーを展開する海島遊民くらぶの江崎貴久社長(46)は、現状ではコロナウイルス対策のために各施設が守るべき指針や基準が曖昧だと指摘。「経済支援も重要だが、観光客を含む市全体の感染対策も重要。観光客に安心して施設を利用してもらうためにも、市として(各施設が守るべき)明確な行動指針を作ってもらい、セールスサポートを図ってほしい」と述べた。