伊勢新聞

2020年3月28日(土)

▼小中高一斉休校を安倍晋三首相が要請した翌日、県も右へならえすることについて、鈴木英敬知事は「国を批判しても仕方がない。臨時休校は県や県教委で決めたこと」。心組んだ再開表明を見送ることについて26日は「政府の対策本部の方針を踏まえる」。ほんに、正直者▼前日は東京オリ・パラの1年程度延期に「アスリートや関係者の健康や命を最優先にする英断」だと手放しだった。IOC(国際オリンピック委員会)の検討期間を大幅短縮したことを評価。「延期を勝ち取った政府や組織委員会も評価したい」。官邸の一員だった知事の原点をまざまざと見せられる思いがする▼むろん何事もイエスマンというわけではない。何より違うのは国民、県民に向き合う姿勢だろう。安倍首相が一斉休校について記者会見したのは要請から二日後。会見そのものが一月以来。オリ・パラ延期も、記者会見して国民に丁寧に説明しようという気はない▼鈴木英敬知事は月2回の定例記者会見のほか、毎日のぶら下がり会見を公式日程にする。日々生起する県内の出来事に、だからこそ逃げず即座に質問に応じて県民に考えを伝え、理解と意見を求める気構えを感じる▼一方県教委は、この日の授業再開発表を直前に中止した。政府の対策会議結果を「踏まえる必要がある」ため。仕事と育児をぎりぎり両立させてきたか細い糸を一斉休校でぷつんと切って奈落の底に落としながら、保護者に予測不能分も含め、少しでも考え方を理解してもらうことより、組織の体面、組織内の調整を優先したのだろう▼ほんに、薄情な。