伊勢新聞

2020年3月27日(金)

▼任期最後の記者会見で廣田恵子県教育長はやり残したことについて「子どもたちのためにできることの未来を描ければ良かった」。それどころではなかったことは、最後の会見すら、上司らの印鑑を無断使用した埋蔵文化財センター文化財技師の処分の発表と抱き合わせだったことでもうかがえる

▼「不祥事の対策を考えることの繰り返し」と述懐する。考えた対策がしばしば鈴木英敬知事から疑問符がつく内容で、調査やり直しに追い込まれたことも一度ならず。組織防衛のために臭い物にフタをしようとしているのか、本気で再発防止をめざすのか、判然としない対策ばかりではあった

▼「誰かの印鑑を使うようなことは考えられない。基本中の基本ができず、非常に情けない」と今回も言う。しらじらしく聞こえるのは、中身も見ずに承認・決裁印を押すのがお役所仕事の代名詞とされ、県、県教委のカラ出張がまさにそうだった。決済印代行者の目を盗んで、臨時職員が業者と架空契約を結んだことも

▼卓越した行政マンである廣田教育長が身近で見てきたことである。ずさんな印鑑管理の伝統がいまだ県教委にあり、の側面はある。ネコが責められたとしても、かつお節をちらつかせた側に問題はないか

▼「業務への影響はなかった」が「職員の規律違反が続く中での発生を重く受け止め」と4日、刑事告訴を示唆したが、20日後に「事業に影響や損害を与えていないなど総合的に判断」し告訴せず。管理監督責任は、同センター所長の厳重注意だけ

▼そうしなければならない県教委の事情が透けて見える気がする。