伊勢新聞

2020年3月23日(月)

▼会合の中で掛け声とともに一人が躍り出て、ステップを踏みながら歌うように意見を述べ始めたという。反論もまた踊りながら―本紙連載「地球の片肺を守る」の執筆者、大仲幸作さんのコンゴ民主共和国の村での見聞録だ。長老のステップ写真が添えられている。ノーマルな衣装がわずかに祭とは違うことを感じさせる

▼所変われば品変わるである。姉妹提携するスペイン・バレンシア州での懇親会で、長テーブルを挟んで県側と州側が向かい合わせに座る形は何の変哲もなかったが、階級が上になるほど遅れて登場して中央に座り、ほかはその都度席を動いていく。好奇と合理性に目を見張ったが、コンゴのユニークさはその比ではない

▼首都キンシャサから東部750キロ。民族も言葉もキンシャサとは異なる。踊る会議は、険悪な雰囲気を避けるための知恵と大仲さんは推測する

▼村とはいえ人口250万人の〝大都市〟ながら悪路は「パリ・ダカールラリー」顔負け。そのギャップの答えは到着後すぐ判明する。町の広場はじめ村々のどこもかしこあふれんばかりの子どもの数

▼かつて首都での森林保護の会合で、テーマが「家族計画」だった。違和感を持って聞き流したが、何が差し迫った脅威かを直感的に理解したという。森林が急速に減少している。貧困率九割近くの生活で、食料はじめ薪や炭の必需品、現金収入が何に依存しているかの問題である

▼「家族計画」は戦後から昭和30年代にかけて日本が直面した問題である。目からうろこが落ちる思いで見聞録を読む自分に古今東西の意識の変遷をみる。