伊勢新聞

2020年3月19日(木)

▼「兵は拙速をもって尊し」という。戦いを前に万全を期すあまり手遅れになってはならないから、新型コロナウイルスの国の緊急対応策第2弾について、国への損失補てん要望書で県が「安倍総理の強いリーダーシップで迅速かつ的確に対策を講じていただき県民を代表して心から感謝する」のうち、休校などの「唐突」な要請は迅速を意味してその通りでも、的確かどうかは判断が早過ぎはしないか

▼緊張感と不安をも倍増させたから、心からの感謝を代表されても、委託した覚えはないがという県民も少なくないのではないか。そうは言いながら、ということもあるか。休校は県、県教委が決めたこと(鈴木英敬知事)としながらも学校給食関連の事業者やスクールバスの運行事業者など影響を受けた業者への補償を国に求めた

▼「減税などの思い切った措置」を要望しながら、逆に地方交付税の増額など「地方財政に影響を与えない措置」も。痛みは国が、利益は県がというちゃっかりした要望ではある。急な損失が発生した業種を対象とした「セーフティーネット保証5号」に介護事業者などを加える要請も、唐突と言えば唐突

▼全国知事会などは宿泊業や洗濯業、乳製品製造業などを要望し、すべて追加された。13日の県緊急経済対策でも国への要望に介護業者はない。その休業対策が急きょ組み込むことになったとみえる

▼西村康稔経済財政政策担当相が鈴木知事に「現場の声を届けていただき感謝する」。安倍首相への賛辞は鈴木知事の個人的思いは別にして、くしくも巧みな交渉術になったのかもしれない。