伊勢新聞

2020年3月14日(土)

▼県立高一男子の自殺を調査した県いじめ対策審議会の調査報告書を巡り、県議会常任委で「対応が遅い」と非難され、県教委は「一定の調査はしていた」「審議会から調査開始が遅かったとの提言があった。今後対応したい」。二通りの答弁をしたらしい

▼自殺が平成30年8月。スマホでのやりとりから家族が同下旬、いじめの可能性を高校に申し出。高校は9月上旬、判断はできないと伝えた。家族は11月改めて詳細な調査を希望。県教委が同月、重大事態に認定し12月に同審議会が調査を開始した

▼「一定の調査」は高校の対応か、重大事態の認定までか。むろん遅いなどとは思っていなかったが、審議会の提言と議会の指摘があり「今後対応」ということだろう。矛盾はないのである

▼国の「いじめ重大事態ガイドライン」は、重大事態になってからの指針で、「疑い」段階の調査を求めるが、判断は学校に委ねている。調査主体、委員構成も「学校設置者または学校」任せ。このため重大事態を不登校と自殺に分け、前者は学校が教員中心の「いじめに関する調査委員会」、後者は県教委が外部委員の「県いじめ対策審議会」で調査している。不登校、自殺を一体と考える国には思いもよらぬ分担だろう

▼ガイドラインはまた、重大事態の「適切な報道対応等」を県教委に求める。家族らが公表を望まなくても可能な限りの検証が再発防止につながるとも指摘するが、県教委はいずれも「遺族の希望」として報告書を公表するつもりはない

▼報告しておしまい。その後どう検証、伝承しているのか定かではない。