三重県で唯一のフルマラソンとなる12月20日の「みえ松阪マラソン2020」の概要が決まった。フルマラソン7千人と10キロ以下3千人の計1万人を募集する。多数の参加が見込め、総事業費約2億円の3倍以上、6億円相当の経済効果が期待できるという。一方、隣県の奈良マラソン(定員1万2千人)は1週間前の同13日に開催。ランナーの人気を勝ち取れるか、スタートが注目される。
フルマラソン空白県は三重、福井両県だけ。竹上真人松阪市長は平成27年の市長就任後、「フルマラソンをしていない最後の県になるのはね」と実現を目指してきた。
実行委員会の会長は竹上市長が務め、名誉会長は鈴木英敬知事、顧問は三重陸上競技協会会長の田村憲久衆院議員が就いている。
コースは同市川井町のクラギ文化ホール前をスタートし、ゴールの同市山下町の市総合運動公園まで42・195キロ。全日本大学駅伝のコースや松阪城跡を背景に走る姿を撮影できる場所を取り入れ、櫛田川沿いを駆け抜ける。トンネルが2つあり、合わせて約1・2キロ。「ちょうどクリスマス。イルミネーションで飾りたい」(竹上市長)と計画している。
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第3回実行委は2月8日に開き、大会概要を決めた。参加料は松阪牛にちなむ「いい肉」の語呂合わせで税込み1万1290円。エントリーの開始は市民ら先行枠が4月下旬、一般枠が5月下旬。先行枠には松阪牛を提供する高額設定の「たべきれへん!プレミアム」や「お土産付き」「まっつぁか満喫!宿泊付き」を設けた。
制限時間は初めてマラソンに挑戦する人や楽しみながら走るランナーが参加しやすいように7時間と長めにした。
県外からの参加は半分ほどの約3千人を見込むが、松阪駅周辺のホテルのベッド数は約千人にとどまり、マラソン以外の宿泊者もいるので、市外の宿泊施設の利用が欠かせない。ランナーは家族旅行を兼ねて来たり、友達が応援に訪れたりで、「松阪市へ県外から一日で来ていただくのは、この日が一番多い」(竹上市長)とみている。
隣県の奈良マラソンは12月13日に開く。奈良県や奈良市、天理市でつくる実行委員会が主催。平城京跡や奈良公園の鹿、天理教教会本部などを見ながら走る。
近隣での同時期の開催だが、竹上市長は「かぶらない日を選んだ。一緒の日時でなくありがたい」と前向き。
ハーフマラソンがメインのこれまで実施してきた松阪シティマラソンは最後となる3月15日の第15回大会が新型コロナウイルスの感染拡大防止のため中止となった。ただ、みえ松阪マラソンへの先行申し込み特典を付けたところ、エントリーが前回比1・48倍の4340人と過去最多となり、期待の高さがうかがえた。
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総事業費は約2億円。沿道の警備費や給水所16カ所の備品費などで相当費用が掛かる。市負担金は事業費の4分の1程度が適当とされ6千万円。フルマラソン走者からの参加料収入は定員が埋まって7903万円。残りは企業などからの協賛でまかない、寄付金集めが大変。最高位の協賛企業「プラチナパートナー」には第三銀行グループや百五銀行が就き、それぞれ1千万円を寄付した。
フルマラソンは県内で過去に東員町が開いて平成14年の第6回大会で終わった。終了の原因を調べた楠谷さゆり松阪市議は「制限時間が4時間で非常に厳しく、地元ランナーの参加が少なかった。東員町には宿泊施設が少なく桑名市に泊まり、地元にお金が落ちない」と説明し、「地元ランナーを増やす、地元にお金を落とす、が欠けていては長続きしない」と指摘する。
ハワイ・マウイマラソンで優勝している楠谷市議は「最初の大会の印象が好評だと噂がバッと広がる。はやりの言葉でランナーファーストで」とハッパを掛ける。
竹上市長は「市民や地域、企業、行政がはやりの言葉で言えばワンチームとなって大会を盛り上げる」と意気込んでいる。