伊勢新聞

2020年3月2日(月)

▼伊勢シーパラダイスや志摩スペイン村、マリンランドなど、大型テーマパークの休園が続き、スポーツ大会も中止に追い込まれている。新型コロナウイルス防疫対策での安倍晋三首相の要請に沿った対応が県内でも拡大しているが、首相は29日会見し、全小中高校の臨時休校の説明不足を認めた上で釈明。保護者の休職に対する助成制度新設や、第2弾の緊急対策をまとめることを表明した

▼首相会見は1月6日の神宮での年頭会見以来という。矢継ぎ早に唐突な自粛要請を放った焦りにも似た封じ込め作戦と軌を一にした感がなきにしもあらず。一方、県立学校の休校について「県や県教委で決めたこと」と大見えを切った鈴木英敬知事は、毎日のようにぶら下がり会見に応じていたにもかかわらず、この日は音なしの構え。前日に「働く保護者への配慮に努める」と述べたことへの具体策は先送りにした

▼休校を決めたのは県と県教委だが、保護者対策は国の施策をみてということか。首相の休校要請に県内首長らをはじめ関係者が一様に疑問視したのは、首相は地方の教育現場の実情を知っているのか、だった。地方に大きな影響を与える施策にこそ、国の為政者と地方との認識の距離が分かる

▼それを埋めるのが中二階といわれる県の、そして知事の責務だろう。首相が休職助成や非正規労働者の対策を打ち出すのに先駆け、県で必要になる実効策をまとめ、県民を安心させ、国に要求していくのが役割ではないか。緊急施策の提案と言い換えてもいい。「国を批判しても仕方がない」と言っている場合ではない。