2020年3月1日(土)

▼文部科学省が反対し、閣内にも疑問の声のある安倍晋三首相の全小中高校、特別支援学校の臨時休校の要請である。国、というより首相独断の見切り発車の見方が強いが、鈴木英敬三重県知事は「国を批判しても仕方がない。臨時休校は県や県教委で決めたこと」

▼「お上のご政道に口ごたえなどしてはいけない」と言っているように聞こえるが、真骨頂は続く「県や県教委で決めたこと」。弁慶の仁王立ち。あるいは大将の馬前にはせ参じて大手を広げて敵を遮る忠臣の趣がある

▼基本方針にない要請の第2弾である。「子どもの命と健康、安全を最優先とする観点から判断した」というのが的を射たものかどうかはともなく、「巧遅は拙速にしかず」という。万全を期して手遅れになっては取り返しがつかないという孫子の兵法は確かにその通りだろう

▼一方で孫子は「戦わずして勝つ」を上策とし、百戦百勝を次策とした。四日市市は、特別支援学級児童生徒の保護者への対応が必要だと、休校を国の要請日からの3日遅らせた。亀山市は、国の要請外である保育園も休園にした

▼これらの対応を「一部の市の事情」として知らぬ顔を決め込んでいいはずがあるまい。拙速で新型コロナウイルスを封じ込めたとしても、戦わずして勝つ、すなわち平素の周到な備えが上策であり、四日市市、亀山市の対応などは直ちに統一して実施できるように備えておかなければならないということである

▼実際は県内でマスクも消毒液も不足している。休校対策も、首相の突然の提案はともかくとして、その前に準備は整えておきたかった。