伊勢新聞

大観小観 2020年2月26日(水)

▼和歌山県立高校男性教諭の死が過労自殺と認められた。三重県教委としても気になることではないか。申請した遺族の弁護士が「学校が抱える問題が一度に重なった象徴的ケース」と指摘した。「象徴的ケース」とは、まれ、あるいは珍しさを意味しない。どこにでもあるケースということである

▼男性教諭は平成17年に採用され、理科を教える傍ら野球部の部長、監督、会計を務め、帰宅後は授業の資料づくり、部活や進路指導の文書作成など。時間外は認定されただけで「80時間以上」。部活運営を巡り保護者からの抗議が殺到していたが、学校側が支えた形跡はない

▼自殺したのは働き盛りの32歳。遺族が民間の労災に当たる「公務災害認定」を申請したのが平成23年。6年後、地方公務員災害補償基金和歌山県支部が申請を退けた。公務外が原因と認定したということだ

▼不服を申し立てに、同支部審査会が逆転裁決した。実に13年に及ぶ闘いだ。教諭の公務災害はこれまで通勤中や体育指導中のけがが中心。過労自殺で認められたのは全国でも初めてではないか。県内で教員の自殺は年7件程度と言われる

▼名張市の教育長が「県教委によると」と議会答弁したが、県教委は認めていない。自殺の理由も「報告がない」として調べていない。過重労働が疑われる精神疾患や自殺はあってもその実態を調査することなく、部活動制限などの働き方改革をまとめている

▼うわべをなぜる結果も当然の気がする。先には教員間のいじめも、異例の公務災害認定となった。県教委の周囲で、時代の流れが進む。