伊勢新聞

2020年2月25日(火)

▼国を挙げての水際作戦をまたもすり抜けて新型コロナウイルスという限定的なウイルスの感染拡大が続く。ウイルスというものの感染経路の複雑さ、未解明部分の多さを改めて物語る。新型だけのことかも、はっきりしない

▼その中で、県はクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から下船した乗客に新たに県内在住者が4人いたと発表した。前日に発表した3人は19日の下船組で、今回の4人は20―21日下船した中に含まれていたという。刻一刻、感染者への接触可能性のある人が増えていくようで緊迫感がいやまさるが、発表が前の3人は下船して3日目の22日で、後の4人がその翌日の23日というのが、いささか間が抜けてみえる

▼クルーズ船の県関係乗客は何人か―その全体像は伝えられず、下船したグループごとに細切れで発表する。症状が出た人ごとにウイルス検査をして、次々感染者を広げた国の対策に似た気がしないか。これほど大騒ぎになっていても、県は下船するまで県関係者を把握していなかったのか

▼感染者は国内全域に広がっている可能性が指摘されている。それを前提の基本計画を国は策定する方針。国と地方はもちろん国民、関係機関の協力体制が求められる見込みだが、情報の伝達に不安を感じさせる中で、果たしてうまく機能し、効果を上げることができるのかどうか

▼県の感染者が1人にとどまっているのは奇跡に近い。連絡会議や本部設置の対策が気休め以上の成果をあげたとも思えないが、それだけに新たな段階を迎えて、情報の授受に遺漏なきことを切に望む。