伊勢新聞

2020年2月23日(日)

▼新型コロナウイルスの感染拡大で、三重県庁は基準ばやりだ。県主催のイベント開催基準を策定した。災害時の犠牲者公表指針発表もその一つだろう。一昨年末から翌年初にかけてのはしか流行で約束した基準づくりが、新型コロナの発生で2年越しに実現した格好だが、県政記者クラブの撤回申し入れで実施時期を延期した。〝促成栽培〟のきらいがないでもない

▼こちらは、昨年12月に改定した公表基準を粛々と実施した話。胸ぐらをつかむなどの体罰をしたとして、県教委は県立高校の40代実習助手を文書訓告にしたと発表した。訓告は、法が定める懲戒処分ではない。懲戒に至らないが不問に付すのもどうかという場合の軽微な処分の一つで、減給などの不利益はなく、履歴書の賞罰欄へ記載する必要もない

▼昨年12月までは公表基準でもなかった。誤答した生徒に腕立て伏せを強要するなどした県立高校教諭を非公表の訓告にしたことで鈴木英敬知事が公表基準の見直しを求め、基準を拡大した。「不祥事に対する抑止力の一つになる」と県教委教職員課。公表を軽微処分の一つにする考え方である。報道機関としてはまことに迷惑な話だが、体罰を軽微から懲戒へ、処分を厳格化する気はないのである

▼懲戒処分の戒告と軽微処分の訓告の境界はあいまいで、体罰に戒告の事例はない。実習助手の身分もあいまいで、いわゆる教諭ではない。そんな不安定さがどの程度影響したか、生徒の胸ぐらをつかまえて別室に連れて行った。職員室に居合わせた教諭は誰も見ていなかったという。闇の中を見る思いがする。