伊勢新聞

2020年2月19日(水)

▼紙面での笑顔が刷り込まれてしまって「末松則子鈴鹿市長が憤りをあらわに」という記事がピンとこない。「県と市町の地域づくり連携・協働協議会」が舞台で、記事は「市町の首長が県幹部に怒号を飛ばす光景は初めて見た」と出席者の声を伝えるが、怒号なる発言が「それは言うたらあかんと思いますに」「もう少し柔軟に話を聞いて」。文字のせいか、柔らかい

▼かつて山中光茂松阪市長(当時)が県の学童保育関連予算削減に苦言を呈したのは、この協議会ではなかったか。県当局が沈黙し、鈴木英敬知事が撤回した。市町が苦情を言うことはこれまでにもあるが「怒号」が異例ということらしい

▼ちょっとやそっとの怒りではないということだ。余程不満が蓄積していたに違いない。「長年の」という形容詞をつけてもいいかもしれない。鈴木知事が平成29年度を「スポーツ元年」と命名して新年度で4年目。三重とこわか国体・とこわか大会(全国障害者スポーツ大会)関係の市町の出費額の見直しが怒号に至る発端というから、蓄積期間として十分ではある

▼市長たるもの、協議の場で「怒号」は何事かという向きもあろうが、関係者は「他の市町長を代弁した形」という。言わせた県が問題という考え方だ。知事は県議会で「(東京五輪での県民の)熱気をとこわか国体・大会に継承し、準備を進める」

▼東京オリパラを連呼した安倍首相の施政方針演説に比べ、とこわか国体・大会への利用ならスポーツつながりではある。施政方針演説にも「オリンピックばかりじゃないか」と、ヤジが飛んだという。