伊勢新聞

2020年2月17日(月)

▼取得単位の少なさや転職を繰り返したことで、まともな就職戦線には縁がなかったが、就職試験はよく受け、よく落ちた。10社ほど履歴書を送って全滅し、履歴書を買いに走ったことも。そんな体験を踏まえても、平成6年前後の、100社単位で受けても成功しないという就職氷河期のニュースには胸が凍った

▼「就職氷河期」が新語・流行語大賞となり、就職情報会社が募った流行語の「お祈りメール」には身につまされた。不採用の連絡の末尾に「今後の活躍をお祈りしています」などと書いてあることで、当時は送る立場で機械的に使っていた

▼お祈りされ続けると「神に近づく」。一笑に付せないもの悲しさがある。説明会でうなずき続ける「赤べこ」や、真っ先に手を上げる「背泳ぎ」。切ない。昨年12月の県議会で、稲森稔尚県議か「県職員が少ない年齢層と就職氷河期世代が一致している」と指摘した

▼県も加担していたということか。国鉄民営化に伴う国の余剰人員対策で、県が実質無試験で旧国鉄職員を大量採用したのはその数年前。平準化のため採用抑制していたか

▼国が就職氷河期世代に特化した支援策を閣議決定したのは昨年12月。関係機関で構成する都道府県プラットホーム設立が目玉だが、県の新年度予算査定で、プラットフォーム設置が提案され本気度を疑ったが、鈴木英敬知事が「連携体制は良いが、具体的な支援を」と指摘したのは当然

▼県は就職氷河期世代対象の職員採用試験を9月に実施する。慌てて準備した気もするが、県にとっては民間へ範を示すとともに罪滅ぼしでもあろう。