▼感染者の個人情報保護か、感染におびえる県民の不安に応えるか―新型コロナウイルスの感染が確認されて以来、県内はその2つの間で揺れている。ネット上で感染者の居住地に関する臆測が飛び交い、県は感染者らの詳しい居住地や交通経路などを明かさない(本紙『まる見えリポート』)
▼感染症法は発生状況や予防に必要な情報の積極的公表を国、県などに義務づける一方で、公開には「個人情報への留意」を求める。昨年1月、県内ではしかが猛威を振るった時は、県は個人情報保護を重視し、流行の拡大を招いた。鈴木英敬知事は「大変申し訳ない。公表の仕方は議論しても良かった。反省点」とし、ベストの公表の仕方を議論すると語った
▼結果は明らかにされていない。「県民への注意喚起のあり方を少し整理した」というだけだから不安解消策の方は拱手傍観か。知事が強制入院や仕事を休むよう指示できる「指定感染症」へ前倒しで施行され、緊迫感は格段に増したが、県が何か新たな情報を提供した気配はない
▼昨年のはしか騒ぎで、県は三週間ぶりの県外での感染者に限っては、職業、居住地や時間単位の詳しい交通経路、立ち寄り先などを公表し「発疹やせきなどが出た場合、医療機関での受診を」と呼びかけた。ダブルスタンダードか、原因が県外感染だから、ここは何としても封じ込めなければとまなじりを決したか
▼30枚900円のマスクがネットで今5千円。県がマスクの着用を呼びかけるせいでもあるまいが、日々上がっている。情報提供にきちんと整理した形跡は、やはりうかがえない。