伊勢新聞

<まる見えリポート>新型コロナウイルス 県内観光、中止の動きも

【新型コロナウイルスへの対策を話し合う連絡調整会議=津市西丸之内で】

新型コロナウイルスへの感染が三重県内で確認されてから最初の週末を迎えた。感染者の発生を受けて県内への観光を取りやめる動きも出ている。県内の薬局やスーパーではマスクの品薄状態が続き、インターネット上では感染者の居住地に関する臆測が飛び交う。県は休日も電話相談窓口で県民からの問い合わせに対応しているが、開示される情報が限られ、県民の間で不安が増している。

新型コロナウイルスは昨年末ごろから中国湖北省武漢市で感染が確認され、いまや世界各国に広まりつつある。WHO(世界保健機関)は1人の患者から広がる感染者を「1・4―2・5人」と見積もっており、インフルエンザと同程度とみられている。

厚労省などによると、コロナウイルスは発熱やせきなどを引き起こすウイルスで、人に感染を起こすと分かっているのは6種類。SARSなど重症化する疾患の原因となるウイルスが含まれる一方で、4種類は一般のかぜの原因の10―15%を占める。

年明け以降、新型コロナウイルスの脅威が増し、1月16日には神奈川県で国内初の感染が確認された。愛知県や奈良県など隣接する地域で感染が相次ぎ、県が対策本部を立ち上げるなど緊張感が増していた。30日にはついに県内でも確認される事態となった。

感染が確認されたのは、外国籍の50代男性。昨年12月24日―今年1月13日まで武漢市に帰省していた。県内に戻った後、発熱し、30日の検査で感染が確認された。県は男性の職場仲間3人を濃厚接触者と特定し、感染拡大の防止を図っている。

感染拡大への懸念から、1月中旬以降、マスクの需要が増大。県内での感染確認が報道された後は、薬局やスーパーで品切れが相次ぎ、購入個数を制限する店も。津市内のドラッグストアは「マスクは完売し、入荷の見通しも立っていない」と説明する。

インターネット上では、感染者の居住地に関する臆測も飛び交う。「医療関係者から聞いた」といった伝聞情報が散見される。県や厚生労働省が感染者の詳しい居住地や詳しい交通経路などは「個人情報の保護」を理由に明らかにしていないからだ。

詳しい情報がないまま感染拡大の報道が流れ、県民の不安は増すばかり。津市によると、市民からはせきや発熱などの症状がなくても「(発生源とされる)中国湖北省武漢市からの帰国者と接触したが、大丈夫か」といった問い合わせが来ているという。

同市が31日に開いた連絡調整会議では、総合支所の職員が「市民にどう伝えるのか。乖離(かいり)するばかりだ」と情報の少なさに苦言を呈した。健康福祉部の職員は「コロナウイルスによるかぜは普通に起こる。心配は承知している」とし、認識に隔たりが見られた。

こうした中、新型コロナウイルスによる肺炎などを「指定感染症」とする政令が1日に施行された。都道府県知事が患者を強制的に入院させることができ、一定期間仕事を休むように指示できる。ウイルスによる感染症が疑われる人も対象の患者に含まれる。

新型コロナウイルスに対する有効な治療薬やワクチンがない中、今できる予防は通常のかぜやインフルエンザの対策と同じだ。県はマスクの着用や手洗いの徹底、アルコール消毒などで対策を呼び掛けている。感染者の情報を詳細に開示していない中、県民への丁寧な説明も求められている。