▼平成15年の東京・新橋の地下鉄ホーム。マスクの中年女性が、柱の陰で激しく咳き込んだ。少し離れたベンチからホームレス風の男性が怒鳴った。「うるさい。あっちへ行け!」。コロナウイルスが引き起こすSARS(重症急性呼吸器症候群)の流行で不安が拡大していた
▼ドラッグストアはもちろんスーパー、コンビニなどでマスクは売れ切れで入荷は「分からない」。その再現が、県内で始まっている。納品ができないとの連絡が卸業者から各薬局へ。その矢先、新型コロナウイルスによる県内初感染者が確認された
▼救急搬送されたが肺炎像がなかったため新型コロナウイルスの検査をせずに自宅療養となり、翌日再度発熱。翌29日に再受診して30日、県の検査で陽性が確認された。対応の遅れと一概に非難できまい
▼中国当局の公表が昨年12月末。人から人への感染はないとされ、500万人が市から逃げ出していると中国・武漢市長が発表したのは今月26日だ。愛知県での感染確認で県が連絡会議を開いたのが27日で、政府が「指定感染症」に閣議決定した翌29日、対策本部を設置
▼感染の速度はそれを上回る。奈良県の男性は、武漢市からの観光客を乗せたバスの運転手だが、当の奈良県は「現時点では広く流行が認められている状況ではありません」
▼連絡会議で「現時点では過剰に心配することはない」とメッセージを出した鈴木英敬知事も30日の対策本部ではマスク着用など感染症対策を指示。マスクはしかし、入手難。うがい、手洗い、不用の外出は避けるなどの自己防衛を―。