伊勢新聞

2020年1月31日(金)

▼県自治会連合会約60人が津市のアストホールで知事を囲んで地域の課題などで意見交換したが、太陽光発電施設の規制強化を要望するなら、場所を間違えたのではないか

▼周辺地域に与える影響の拡大、反対運動の広がり、無造作な開発に伴う自然破壊や災害激化の懸念に対し、知事は「工事の安全性や景観などでの地域の懸念」に理解を示したものの、条例制定などは明確に否定。「ガイドラインをてこに、個別の指導をしたい」

▼建設残土の規制を求める伊賀地域や県南部の住民に対し「今のところ新制度などの必要はなく、既存の法規制で十分」と答えていた県当局と構図がそっくり。知事の現地視察で一挙に方針が転換された。百聞は一見にしかずである。住環境の悪化を招いていたり、先の台風で崩壊した現場を見てもらう工夫が必要だったのではないか

▼何しろ、発電施設設置の抑制条例を定めた志摩市でさえ、農地や遊休地の買収、貸与を求める新聞チラシが今も定期的に入る。三方を太陽光施設で囲まれた家もあり、猿やイノシシの獣害が激しかったのは山林を切り開いた太陽光のせいだと確信している住民は多い

▼ガイドライン策定は平成29年。太陽光などの新エネルギー促進のエネルギー対策本部を知事が設置したのは初当選直後の23年5月。ガイドラインそのものが後手に回ったための弥縫策

▼道路の白線も、知事は「優先度の高い1400キロ分を全て引き直せるように取り組む」。優先度、必ずしも剥離具合ではなかろう。問題はここまでにした無計画さであり、白線だけのことではない。