▼暴言など、夫のモラルハラスメントから逃げている妻の転居先を鈴鹿市は夫に伝えてしまった。またか―。といっても、市役所が同じことを繰り返したというのではない。鈴鹿警察署が、元暴力団の内縁の夫から逃げるために駆け込んだ女性を釈放する際、日時と場所を内縁の夫に連絡したことがあった
▼「売春をしていた女じゃないか」とか「外国人じゃないか」と署員が言ったわけではない。管理売春の疑いある当事者に引き渡すことに、取り締まる側と取り締まられる側とのなれ合いを感じさせただけだが、転居先を教えた市の女性職員は、書類の発行不能処理を怠ったことについて「いつもは気をつけているが、その時は忘れてしまった」と話している
▼そんな釈明を発表の席で披歴する所属幹部を含め、何とふてぶてしい。かつての鈴鹿署員の対応を連想させた。県警本部長が会見して陳謝した記憶がない。そこら中に顔を出して笑顔を振りまく末松則子市長が「心からおわび」のコメントだけなのはむしろ進歩だろう
▼「大きなご心労を与えた。再発防止に全力を挙げる」も心からの気持ちに違いないが、担当職員の処分を検討しているという。鈴鹿署の事件では大幅異動で、県警本部長も軽量ポストへ去った
▼市は、現在のところ被害は確認されていないと言ったらしい。「大きなご心労」は被害ではないのだろう。夫が書類を持っていると知って転居前の市に問い合わせた妻の衝撃も―。被害とはいったい何なのだろうか
▼市長はじめ管理職らが自分の処分については考えてもみないようなのが分かる気がする。