伊勢新聞

2020年1月29日(水)

▼県内随一の交通死亡事故多発市である松阪市が高齢者交通死亡事故多発注意報を発令した。昨年6月に交通死亡事故多発注意報を出し、効果なく7月に警報に。半年を経て高齢者照準の注意報だ

▼そのつど、のぼりやポスターなど啓発活動に力を入れるとしたが、さすがに限界を悟ったか、竹上真人市長は反射材着用を呼びかける具体策を打ち出した。昨年の高齢者の死亡は8人。「今年こそはと思っていたが、年明けから3人亡くなる深刻な状況」と警鐘を鳴らす

▼昨年の警報時には「交通安全の意識を高めてほしい」。誰が―。運転者や歩行者が、ということだろうが、信号機のない横断歩道で車の8割が一時停止しないという県警の発表をどう聞いたか。昨年の日本自動車連盟(JAF)の調査では全国最下位だった

▼調査が夜間だったらさらに低下したのではないか。郊外の横断歩道でヒヤリ体験は多く、時に牛若丸並みの身軽さか必要。県警は「なぜ日本人はルールを守れないか」という一時停止率分析記事をホームページに載せている。意図は明白だが、運転者側にとって守れない事情もあるのではないか

▼津市内の信号交差点で昼間、右折専用車線から直進する車が2、3台と続いた。右への道路の矢印がほとんど消えていた。信号のない交差点の消えた一時停止線に何度ヒヤリとしたことか。伊勢市に赴任した全国紙記者が消えかかった白線の多さをコラムに書いていた。全国最下位は一時停止率だけではないかもしれない

▼反射材着用は歩行者の心得として、為政者の務めである白線整備の方もお忘れなく。