伊勢新聞

2020年1月25日(土)

▼鳥羽市が好調なふるさと納税の寄付金に伴い、1億8600万円の増額補正案を議会に上程した。基金のほか報償費に充てるなど、市民への恩恵は今後のお楽しみということだろうが、真珠製品の返礼品取り扱い再開で不振を盛り返し、中村欣一郎市長も「市民も真珠養殖に関わる人も心待ちにしていた」と手放しの喜びようだ

▼再開までの道のりは、国と地方のあり方、日本の民主主義の本質を浮き彫りにした。返礼品競争の過激化に悩んだ総務省が「資産性の高い装飾品」として鳥羽市に真珠製品と宿泊券を外すよう通知したのは平成29年4月。市は真珠は地場産品だと議会が取り扱い継続を決議するなど激しく反発した

▼「市の主張もよく分かる」と仲裁を買って出たのが鈴木英敬知事。総務省との〝話し合いの場〟なるものを設けるとして事実上のガス抜きをし、国に従う道を示した。従わなかった泉佐野市など3市町が「寄付額の3割以下」とした新制度から閉め出され、第三者機関とされる国地方係争処理委員会の見直し勧告も無視された

▼「上下・主従」から「対等・協力」へと国と地方の関係が改正されたのは平成12年。地方が国に逆らわない場合の制度であり、言わなくても逆らわなくなったからできた制度でもあることを思い知らされた道のりでもある。「対等・協力」は建前で、実質「上下・主従」なのは沖縄ばかりではない

▼ふるさと応援の本音と、泉佐野市のようなむちゃをやるやつは村八分だという江戸時代以来の発想は、国だけでなく、島国日本の隅々に健在であることもうかがわせた。