伊勢新聞

2020年1月22日(水)

▼東京五輪・パラリンピック「応援村」を開設するとして全国空き家バンク推進機構(ZAB)が全国応援村実行委員会の立ち上げを発表したのは昨年6月。鈴木英敬知事も委員就任予定と報じられ、前後して津市は不動産関係8団体でつくる「空き家ネットワークみえ」と空き家対策で連携する協定を締結している

▼ZABも空き家ネットワークも空き家の活用が目的だが、加わる県と津市との狙いは相反する。飲食ブースやスポーツ体験コーナーを設けて来場者をもてなす「応援村」設置について、知事は複数の小規模施設かスポーツ施設などの大規模かは「市町と議論したい」

▼「空き家ネットワーク」との協定については前葉泰幸市長が「どう相談したらいいか分からない人が多い。市に相談があったものについて対応をお願いする」。翌月、市広報の「市長コラム」で、この締結を紹介するとともに、崩壊の危険がある空き家が増加し、相談もまた激増しているとして、所有者の責任ある行動を呼びかけている

▼空き家火災などが本紙でも報じられている。アナグマが住み着き、ふん尿で天井が抜ける被害もあるという。所有者の気持ちの代弁者として「粘り強く、とことん話し合う」として、解決件数の県内最多を誇っていた前葉市長が、その半年後に解体の行政代執行に踏み切った

▼六件に勧告を出していたから、行政代執行はその中でも特に悪質か危険が迫っていたということだろうが、最終的権力の行使にはどんな手続きの経過だったか、説明責任もまた求められよう。市と県のチグハグな空き家も気になる。