<まる見えリポート>衆院議員の汚職事件 IRイメージ悪化を懸念

【IR整備先の選択肢と目される木曽岬干拓地】

政府が主導するカジノを含む統合型リゾート(IR)の参入を巡り、衆院議員の秋元司容疑者(48)が逮捕された汚職事件。贈賄側の中国企業関係者が秋元容疑者のほかにも「5人の国会議員に現金を渡した」と供述したとのニュースも飛び交い、事件は一層の広がりを見せている。一方、県内でも商工団体や桑名市がIRに関心を示しており、県にIRに関する調査を要請。調査に当たっている県は「現段階で事件が県の対応に影響することはない」としつつも「事件によってIRのイメージが悪くなる」と懸念する。

IRは、カジノや国際会議場、宿泊施設などで構成する施設。政府は外国人観光客の誘致に向けた起爆剤と位置付け、年内にも3カ所を設置先に選定する方針だ。横浜、大阪の両市と大阪府、和歌山、長崎の両県が誘致に名乗りを上げている。

そのIRに昨年末、激震が走った。IR参入を目指した中国企業側から現金を受け取ったとして、秋元容疑者が先月25日、東京地検特捜部に収賄容疑で逮捕された。逮捕容疑では秋元容疑者が現金300万円を受領し、北海道旅行の招待も受けたとされる。

県内も決してIRに無縁というわけではない。県内がIRを巡って取り沙汰されたのは一昨年11月。河村たかし名古屋市長が記者会見で、候補地の選択肢として桑名市のナガシマスパーランド周辺に言及したことで、にわかに県内が注目された。

当時は県も「驚きを持って受け止めた」(鈴木英敬知事)というが、昨年9月に県商工会議所連合会や桑名市の要望を受けて「調査と研究」に着手。県観光局がIRによる経済効果やデメリットなどを「ニュートラルな立場」で調べているという。

ただ、事件を受けて県内の関係者から懸念の声も上がる。県観光局の担当者は「IRがしっかりと議論される前に、悪いイメージが付いてしまう」と指摘。桑名市商工課も「事件の影響で、IRはカジノそのものという認識が強調されてしまうのでは」と話す。

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そもそも県内でIRは実現可能なのか。「国の整備要件を満たす土地を市内だけで確保するのは困難」(伊藤徳宇桑名市長)という発言などを解釈し、関係者の間では候補地の一つとして三重、愛知両県にまたがる木曽岬干拓地が目されている。

面積は三重県側だけでも約330ヘクタール。一部はメガソーラー(大規模太陽光発電所)を設置し、工業用地としても分譲するが、それでも十分な余裕がある。7年後に予定されるリニア中央新幹線東京―名古屋間の開業もアクセスに寄与するとみられる。

仮に県が誘致を表明すれば、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の誘致を成功させたことなど、安倍政権との蜜月関係もメリットとなり得る。「県が誘致に名乗りを上げるなら、その時は既に水面下で確約が得られているのだろう」(県議)との声もある。

一方、木曽岬干拓地の地元県議は、住民から「桑名市は何の説明もなく県にIRの調査を要望した」との批判が寄せられていると指摘。「木曽岬干拓地の周辺は岡田克也氏の地盤。そんなところを安倍政権がIRの整備先に選ぶとは思えない」と観測する。

また、ギャンブル依存症による多重債務者の増加や周辺地域の治安に与える影響など、カジノに対してさまざまな懸念があるのも事実。県は伊勢志摩サミットのように、遅ればせながらも誘致に名乗りを上げるのか。今後の判断が注目される。