伊勢新聞

2020年1月5日(日)

▼諦めないのが恋の秘訣―といってもショウジョウバエの話。雄の求愛を拒否していた雌が、繰り返しアタックされると受け入れに転じる脳の神経機構を解明したという名古屋大学の研究チームの成果に悔やむご同輩もいるのではないか

▼雄は羽を震わせて「求愛歌」を奏で、雌はいったん拒否の態度を示し、相手を見極める。誘い誘われの人間の恋愛模様そのままで、雌の脳の中に「拒否」の神経伝達物質が活性化するとともに「受容」物質も促進され、拒否反応を抑制していくという

▼テレビの長寿番組『新婚さんいらっしゃい』に登場する夫婦で、出会ってすぐ互いに好感を持つカップルは意外に少ないことを連想する。どちらかが全然意識しないことが多く、一方の働きかけである瞬間もう一方を振り向かせる。「恋は押しの一手」「粘り強く、諦めないのがコツ」などのスポーツみたいなことを説く恋愛指南論も多い

▼もっとも「雌にも好みがあるようで、なかなか受容しないこともある」ともいう。猛アタックが必ず実るわけでなく、同じショウジョウバエの研究では、一度失敗した雄は求愛行動をしなくなるという米大研究チームの発表もある。アルコールを含むエサを極端に好むようになったともいう。地球に住む仲間という気になってくる

▼NHKの『ダーウィンが来た』でさまざまな動物の求愛行動を見るが、オスがそれぞれの〝求愛歌〟を奏でるのは同じで、オス同士の激しい戦いもあるが、メスから拒否されたオスが強引に迫ることはない。ストーカーやセクハラ、性暴力の話題が尽きない人間は、地球の動物の中でも異端児なのかもしれない。