伊勢新聞

<1年を振り返って>三重県知事選 鈴木英敬氏、圧倒的な差を付け3選

現職の鈴木英敬氏=当時(44)、自民・公明・新政みえ推薦=と、新人の鈴木加奈子氏=当時(79)、共産推薦=による一騎打ちとなった4月の三重県知事選は、現職が新人に圧倒的な差を付けて当選。3期目の鈴木県政がスタートした。

鈴木英敬氏は自民、公明に加え、旧民進系の新政みえや連合三重などからも推薦を受ける万全の態勢で勝利。主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)をはじめとする2期目の実績が評価された。

得票率は歴代3位の89・7%。前回知事選を4ポイント上回る盤石の戦いぶりだった。鈴木氏は選挙結果を受けて「1期目の選挙や(衆院選で)落選した時のことを考えると、胸に迫るものがある」と語っていた。

当選後に早々と着手したのは、コンプライアンス(法令順守)の徹底。2期目は職員の不祥事や事務処理の誤りが相次いで発覚し、選挙期間中も教員の懲戒免職や個人情報の漏えいが発表された。

鈴木氏は職員の意識を高めるため、5月から1カ月間かけて本庁で次長級以上の約80人と面談。7月からは課ごとに訪問し、法令順守や風通しのよい職場をテーマに全職員との意見交換に臨んだ。

3期目は県内の一次産業を襲った危機への対応にも負われた。いなべ市内では県内の農場で初めて豚コレラ(CSF)が発生。時を同じくして、志摩市の英虞湾などではアコヤガイが大量死した。

鈴木氏は豚コレラ対策チームの設置や農水相への要望、養豚業者への支援など豚コレラ対策で精力的に活動。アコヤガイの大量死では原因究明や養殖業者への支援に乗り出し、養殖現場への視察にも臨んだ。

政策集で掲げた新たな取り組みにも着手。AI(人工知能)などの最新技術を使って業務を効率化する「スマート改革」や、予算編成に当たって県民から施策の提案を募る「県民参加型予算」も始めた。

今年最後の定例記者会見では「初心を忘れないことが大事」と強調。CSFへの対応や政策集に盛り込んだ施策への進捗を自ら評価し、3期目の9カ月間を「スムーズな滑り出し」と語った。

ただ、財政の健全化は道半ば。平成30年度の一般会計歳入歳出決算で一定の改善がみられたが、依然として深刻な状況。2年後に迫る三重とこわか国体・とこわか大会の出費も悩みの種となる。

一方、鈴木氏に「国政進出」のうわさがつきまとうのは、3期目になっても同じ。「スムーズな滑り出し」は今後も継続されるか。