三重県外から尾鷲市や紀北町に建設残土が搬入されている問題を受け、紀北町と尾鷲市は今年、建設残土の搬入を規制する条例案をそれぞれの議会で可決した。紀北町は7月1日から施行している。尾鷲市は来年4月から施行する。
紀北町の条例では、道路や排水路などの環境配慮区域内または隣接地で1000平方メートル以上の土地を埋め立てる場合と、区域外で3千平方メートル以上の土地を埋め立てる場合、町への事前届が必要と明記している。
一方、尾鷲市の条例では、土砂などの埋め立て区域の面積が1000平方メートル以上3000平方メートル未満で、高さが1メートルを超える場合は、市長の許可が必要としている。
尾鷲市、紀北町ではそれぞれ一部の議員が「県外からの残土の搬入を禁止すべき」と議場で訴えたが、可決された条例は、県外残土の搬入は禁止していない。
同町では条例制定を巡り、3月5日の町議会教育民生委員会で、町が示した条例案を反対4、賛成3で否決している。条例案では県外からの建設残土の搬入を禁止していないため、一部の議員らが「県外から発生する残土の搬入を禁止する項目を追加すべき」と指摘した。
同月15日の町議会3月定例会の最終日に、一部議員が修正案を提出。4議員が「土の安全性を確かめるには発生場所の調査が必要だが、県外まで調査に行くのは困難。県外からの持ち込みを止めてほしい」と訴えた。修正案には複数の議員が同調したが、7対8の反対多数で否決。原案は13対2の賛成多数で可決した。
尾鷲市でも、12月定例会の最終日に、一部の議員が「(条例案は)県外土砂の搬入禁止が盛り込まれていない。入り口の段階で規制をかける必要性がある」と反対討論に立った。採決の結果、賛成10、反対2で原案通り可決された。
県尾鷲建設事務所によると、紀北町内には土砂による埋め立ては計8カ所あり、うち1カ所で現在も土砂の搬入が続いている。昨年7―11月は、計4万8137トンの土砂が同町の長島港に荷揚げされた。条例施行後は、前年同期比約3万3000トン減の1万5155トンの土砂が荷揚げされ、搬入量は減少している。
町内への残土の搬入は減っているものの、町内にはうず高く積まれた残土が残ったままだ。
町は本年度、生活環境への影響調査のための予算300万円を計上。すべての埋め立て地で、カドミウムや鉛など27項目の基準値が越えていないか調査しているという。また、町職員が月に一度、土砂崩れが発生していないかや埋め立ての構造に変化がないかなどを目視で確認している。
残土の埋め立て地に集落が隣接する同町東長島の田山地区の谷口房夫区長(68)は「土がある限り危険はつきまとう。豪雨などで田山川に土砂が流出すると民家に逆流する恐れがあり、住民は不安に思っている。町は今後も土砂を適切に管理してもらいたい」と語る。また、「土砂の搬入が続いているかなどの情報は住民には分からないので、定期的に情報発信してもらいたい」と話している。