伊勢新聞

大観小観 2019年12月23日(月)

▼昨日は冬至。昼が最も短く、夜が最も長い。1年でもっとも暗い日だが、易では前月の陰一色から陽が入り、陰が極まって陽にかえる日。新年に見立て、一陽来復とした。さあ運気が向いてくるぞ、邪気をはらって元気になろうと、カボチャを食べ、ゆず湯に漬かる

▼日本で今、大人気のハロウィンは元は欧州ケルト民族の収穫祭が起源。やはり年の変わり目とされ、魔よけとしてカブをくりぬいて火をともし、米国に渡ってカボチャを使うようになった。冬至の方は、運を呼ぶには「ん」の付く食材がよいとされ、「南瓜(なんきん)」の字が当てられたカボチャが好まれた

▼語呂合わせだが、栄養満点の食材で、気分と実効が見事に一致する。ゆず湯も、漬かって身体壮健、すなわち「融通が利く」のこじつけが発端で、血行をよくするなど健康効果は同じ。今年も銭湯や多くの家庭で香り高いゆず湯を堪能したろうが、売る側は人知れず悩んだようだ

▼原因は10月1日からの軽減税率。食品一般が適用され消費税が8%に据え置かれる制度だが、コンビニでは持ち帰りが適用で、イートインで食べると不適用。複雑な仕組みだが、ゆずも、薬味やジャムなど食用なら適用だが、ゆず湯となると芳香剤同様、不適用になるのではないか

▼「何にお使いですか」と、販売時に聞かなければならない煩わしさはイートインと同じ。ゆずの書き入れ時というのに「ゆず湯で元気に」など宣伝に「ゆず湯」の名称は使いにくい

▼「湯」抜きの看板が多かったという。融通の利かない制度のおかげというか、融通の利く対応というか。