三重県桑名市のRDF(ごみ固形燃料)焼却発電施設が9月、発電を終えた。ごみを電力にする「夢のリサイクル」とうたわれ、県が市町を巻き込んで進めたが、爆発事故を経て操業開始から17年で幕を下ろした。
9月17日午前、作業員が敷地内の監視室で制御盤のボタンを押し、発電を停止させた。企業庁は経済産業省に報告書を提出して正式に発電所を廃止し、来年度中にも施設の解体作業に着手する方針だ。
RDF発電所は、循環型社会の構築や未利用エネルギーの有効活用を目的として平成14年12月に操業を開始したが、翌年8月に貯蔵庫が爆発。消火作業に当たっていた2人の消防士が死亡した。
県政史に刻まれる悲惨な事故だった。「ドーン」という地響きのような音と共に、直径十メートルはある貯蔵庫のふたが吹き飛んだ。貯蔵庫内でRDFの可燃性ガスが発生したことが原因だったという。
事故を直接に知る職員も退職などで現場を去りつつあり、今後は後世に語り継げるかが問われる。県は事故を受けて続けてきた安全祈願の行事を事業終了後も継続させるほか、敷地内の「安全記念碑」も残す。
ただ、事故だけがRDFの問題ではなかった。県は構想当初、市町に「処理は無料」と説明したが、発電量が見通しより少なかったことなどから、稼働時から一トン当たり約3600円の処理委託料を徴収した。
委託料は値上がりし続け、24年度は当初の2倍以上に当たる7600円に。委託先との契約がいったん終了し、再び契約を結んだ後は1万4100円にまで跳ね上がり、参加市町から不満の声も上がった。
財政面でも「夢の事業」とはかけ離れていた。構想当初は売電による一定の収益を見込んだが、事故を受けた安全対策や委託費の増加を受け、事業の累積赤字は昨年度までで約24億円に膨らんだ。
県と企業庁は施設の解体後に最終的な総括をまとめる。企業庁は27年度にも県議会の要請を受けて「総括」をまとめたが、県議からは「市町の意見を取り入れるべき」などと注文が付いた。
新たな総括は、当初の総括に比べて踏み込んだ内容となるのか。県議らは「RDF事業は県政史上で最大の汚点」として厳しい検証を求め、鈴木英敬知事も「決して甘くはならない」と話す。
一方で「総括」が求められるのは、行政当局だけではなさそうだ。RDF事業を開始する当時、関連予算を認めた県議会には、当然にして議決責任がある。議決の経緯や是非についても検証が求められる。
議員からも、一般質問や常任委員会などでは「議会も総括をすべき」との声が上がっている。中嶋年規議長も取材に「個人の見解だが、何らかの形で議会も総括を出す必要があると考えている」と話す。
ただ、県議会として正式に決めたわけではなく、議会には「県が出してから検討すれば良い」との声もある。二元代表制の一翼を担う議会も、しっかりと教訓を残せるか。来年以降の対応が注目される。