伊勢新聞

2019年12月19日(木)

▼実の娘に対する準強制性交行為が無罪になった名古屋地裁岡崎支部判決に、無罪という結果と、被害者が実の娘ということに驚いたら、県でも監護者性交罪と監護者わいせつの罪に問われたそれぞれ義父と実父の判決が相次いで津地裁であった。24日には別の実父の判決もある。「氷山の一角」とする識者コメントがにわかに現実味を帯び、薄ら寒くなる

▼判決は、監護者性交罪の方が懲役7年で、監護者わいせつ罪は保護観察付き執行猶予刑。両罪とも性犯罪の厳罰化を目指した平成29年の刑法改正で新設された犯罪だが、量刑のあまりの違いに、名古屋地裁に感じた違和感をあらためて思い起こさせた。捜査段階で娘との性交を認めた義父が公判では否認に転じ、控訴した。ぶれが激しい裁判所の判断を目の当たりにすれば当然の権利の主張か

▼監護者わいせつ罪は、児童福祉法違反にしか問えなかったことが問題視されて新設された。実の娘への犯行を「非常識で卑劣」としながら「被告なりに反省など」考慮し猶予にするというのでは、児童福祉法違反の罰則である罰金刑を廃し、懲役刑だけにした意味があるのかどうか

▼監護者わいせつ罪は「6カ月以上10年以下の懲役」。重くなったとはいえ、監護者性交罪の「5年以上20年以下」に比べ格段に軽い。影響力や拒絶の態様が改正刑法の問題点として指摘されているが、改正の趣旨である被害者側の立場になることに果たして配慮されているといえるか。加害者側の視点がまだまだ強くはないか

▼猶予刑で、裁判官の男女比ということも考えてみたくなった。