伊勢新聞

2019年12月10日(火)

▼県の県民参加型予算(みんつく予算)投票が始まった。県民が応募した20件の候補は、いずれもなかなかのアイデアぞろい。これができたらいいなという県職員の声が聞こえてくる気がする

▼鈴木英敬知事の政策集が発端。「県民の理解、共感、納得性を高めながら県政に参画し」、併せて財政難のため「どうせ新しいことを言ってもみたいな」職員の「思考が止まってる」ことの打破も狙いという。そんな知事の思いと、財政当局ら職員の思いの調整で実現したという

▼20件は、応募227件から職員が実現性や類似事業の有無などを精査して絞り込んだ。投票にこだわる知事と、提案だけもらうという事務方とのせめぎ合いがあったというから、事務方がどんな思いで選別したか透けて見える。職員のは思いを反映させたということだろう

▼税金を使うのだから基準はあるに違いない。20件は超えているとして、職員のメガネにかなわなかった207件を見てみたい気はする。ばかばかしい、突拍子もないと思われたアイデアはなかったか。それらを含め精査は県民投票に委ねたかった

▼20件が上位を独占すればよし。それ以外が上位に食い込んだら、その時こそ死にものぐるいの調整をしてもよかった。少なくとも県民を格段に県政に引きつけることにはなったのではないか

▼思考停止は、組織の中で「以心伝心」「思いは一つ」などの形になって表れる。「より良い県をつくるため、どの事業が魅力的かを考えてもらいたい」と投票に当たり行財政課長。上から目線とともに、自分で気づくことは少ない。