三重県鈴鹿市が日常業務で市内を巡回する事業者との間で「地域における見まもり活動等協力に関する協定」を締結し、地域内での異変の早期発見や対応につなげる取り組みが3年目を迎えた。連携の成果が見られ、今後の活動に期待が高まる。
協定の通称は「SUZUKAまるごとアイネット」。平成29年度から始まり、現在は22事業者と締結する。
市が参加事業者に住民の異変や不法投棄など5項目についてアンケートしたところ、9件の事案が確認できた。そのうち市への通報は2件。「側溝のふたが上がっていて危ない」の連絡には当日、道路保全課が対応した。高齢者宅への荷物の配達で電話がつながらず安否を確認できなかったケースは、市と包括支援センターが連携して離れて暮らす家族に通じ、自宅で本人を確認。命に別状はなかったが、骨折していて介護サービスにつなげた。
担当する長寿社会課地域包括ケアシステム推進室の川岸健太郎室長は「うまく連携できたことで大ごとになる前に対処できた」と話す。
鈴鹿市内の計25郵便局は一体となって協定を締結している。約230人が配達業務に携わり、窓口で約百人が対応する。
今年3月まで市との調整役を務めた鈴鹿箕田郵便局の安藤秀樹局長(61)は「窓口は特に固定客が多いので、ささいな変化にも気づきやすい」と話す。職員全体で見守り、家族に連絡するケースも多いという。
生活協同組合コープみえは昨年、協定を締結。同市御園町の鈴鹿センターは鈴鹿、亀山、津市の一部が範囲で、鈴鹿市内の組合員は約1万7千人。34台の配送車両が市内全域を回る。
田中崇志地域統括部長(47)は「同じ担当者が同じ地域を同じ時間帯に訪問することで地域の変化に気づきやすい」と指摘。会員からは「気を遣ってもらえると安心できる」との声もあるという。
入社1年目の中田加那子さん(23)は「普段からコミュニケーションを大切にしている。特に高齢者の家を訪問する時はできるだけ直接会うようにしている」と語る。
川岸室長は「たくさんの目で見守っていくことが重要。いざという時に現場の担当者がどこに通報するのか、ガイドラインの周知を図るとともに、駅など事業者の幅をもっと広げていきたい」と話した。