▼国際女性デーがあり、国際男性デーがある。毎日が何かの記念日や週間にあふれているから気にとめることもなかったが、一般社団法人「Lean In Tokyo」が国際男性デーに「男性が職場や家庭で感じる生きづらさに関する意識調査」をしたことが報じられ、その7位が「スーツ着用の習慣」。240人中の4割強だったのに時代を感じた
▼メディア界は自由な服装の人が多い。だから、第一印象を大切にきちんとした服装で、と零細メディアでスタートした時、先輩に言われた。業界の集まりに所属する時も、懇親会はネクタイ着用を言い渡された。クールビズで世は様変わりしたが、襟元がだらしなく見えるのは、そんな長い習慣からだろう
▼昭和50年代に大ヒットした太田裕美さんの「木綿のハンカチーフ」は、都会に出た男性と、ふるさとに残る女性との交換日記。歌詞に「見間違うようなスーツ着たぼくの写真、写真を見てくれ」とある。スーツが憧れの都会の象徴であり、自身のステータスシンボルであり、また、過酷な都会で生き抜く戦闘服でもあったのだろう
▼もはや憧れやステータスではない。ただただ戦闘服としてのプレッシャーだけが残っているということか。「裃(かみしも)」は江戸時代の武士の正装。「裃を脱ぐ」は、堅苦しい態度を捨て打ち解ける意。若者にとってスーツがそうなっているということだろう
▼ちなみに上位には「力仕事は男の役割」「デート代負担」「一家の大黒柱」「弱音を吐けない」など。同じ男とは思えないなどと言っては時代の遺物となる日が近い。