伊勢新聞

2019年11月20日(水)

▼国の関係機関や県各部局とやりあって「ご説明にお伺いします」と言われたら要注意というのが体験的認識である。峻拒することで険悪になる関係を、自分の方から訪れる異例の行動で緩和させる、そんな狙いが感じられるからである

▼オスプレイの再飛来について、森卓生・防衛省東海防衛支局長が伊勢市に鈴木健一市長を訪ね、理解を求めた。2月の飛来時にはなかったことである。鈴木市長は再度の明野駐屯地使用に「極めて遺憾」とする抗議文を直接支局長に伝える考えを明らかにしていた

▼森支局長は、その機先を制したか。常態化について「市や県の抗議や懸念の声に最大限配慮して対策したい」。抗議や懸念されることのないように対策を講じると言っているようでもある。「訓練に伴う技術や共同対処能力の向上」への理解とは航空学校を抱える明野駐屯地の性格についてのことで「沖縄での基地負担軽減使用の重要性」への理解とは、肩代わりの可能性を示唆していないか

▼前回飛来前にいち早く東海防衛支局に要望書を出し、飛来後の会見、県議会で十分な情報提供はなかったとし、検証した上で今後に備えるとして鈴木英敬知事が、今回は音なしの構えなのも気になる。知事選の前と後との違いでもあるまいが、「現時点で予定はないと認識」と語ってから9カ月後の再飛来である

▼過去飛来した駐屯地で常駐化されていないことを根拠に「明野でもそんな議論は承知していない」と太鼓判を押した方にも、どれほど信ぴょう性があるか。すさまじかったごう音、爆風がよみがえり、不安な心地になる。