伊勢新聞

2019年11月17日(日)

▼子どもが自殺することなどあり得ないと信じられていた時代があった。いじめ自殺などが発生したころ、関係者は一様に驚き、世間はその深刻さに衝撃を受けたが、いじめ自殺は今や珍しいことではなくなった

▼6月の中3男子に続き、中2女子がこの13日、公園で首をつっている状態で発見され、死亡が確認された。前日は、高2男子が校舎から飛び降りている。いずれも遺書はなく、高2男子は写真共有アプリに「いじめや家庭的な問題はなく、飛び降りたのは誰のせいでもない」などと投稿していた

▼いずれも自殺の可能性が高いとされている。しかし、いじめやトラブルは確認されていないという。では、なぜ―。「いわく『不可解』」の言葉で知られる「巌頭之感」を残して明治36年、華厳滝に身を投じた藤村操は16歳。厭世観からとされるが、生きがたい現実が中高生3人にもあったのだろう

▼県教委のいじめ発見能力に疑問もある。調査ごとの揺れが激しく、昨年8月の県立高1男子の自殺はスマホの記録からの家族の届けで「重大事態」に認定された。一昨年の同高2女子の場合も認定は不登校になってから

▼後者の調査委員会は同高校長や教頭、主任、担任が委員に連なり、国が指導する「第三者委員会」とは言いがたい。前者を調査する県いじめ対策審議会も教育委員会の諮問機関。諮問に答えるのが主務で、調査委員会としての機能は想定外。会長は弁護士1人を調査員として加える方針で「私一人では手が回らない」

▼いじめの認識、能力不足が不可解な自殺を招いていないか。不安は募る。