伊勢新聞

2019年11月13日(水)

▼報酬面でも大知事の領域へ迫る鈴木英敬知事だ。リニア中央新幹線の県内駅候補問題に触れた川勝平太静岡県知事の発言に対し「了解なく、立ち話のような場でのことを定例会見でおっしゃるのはどうか」とたしなめたのは知事心得としてそうあるべきなのだろう

▼「極めてセンシティブな話を何らプロセスを経ず軽々しく言われた」とも。「プロセス」とは、了解を取る手順ということらしい。抗議は「事実無根」だったが、川勝氏に「90%亀山に決まった」と鈴木知事が言ったかのように受け取られるやりとりはあったということでもあろう

▼知事の権威、重みなどには縁のないしがない文屋稼業としては、権威の回りに張り付いて、もっぱら「軽々しい発言」を狙って記事にしてきた気がする。愚痴、恨み言のたぐいは頂戴した。「趣旨が違う」「一部だけを取り上げられた」などなど

▼四半世紀前の県スペイン視察団に同行して最終日、団員だけの夕食となり、田川亮三知事(当時)と同テーブルになった。帰国後に控えたまつり博の盛り上げ策の話になり、いろいろ上げた中でスペインの火祭りの影響か、例えば夜間開催とか、と言ったのを報じた。議会が反応し、田川知事は「雑談でちょっと言っただけなんだが」と戸惑いを繰り返していたが、結局実現した

▼「立ち話のような場」がどんな場かは知らないが、話題のリニアの話だ。沿線知事らの会話は記者にとっては関心事だろう。「極めてセンシティブな話」を同僚知事とはいえ「軽々しく語ってしまった」。大知事としても千慮の一失だったかもしれない。