伊勢新聞

2019年11月5日(火)

▼鈴鹿市の運動施設で利用団体の一つである市体育協会が自動販売機を設置して収益を得ている問題で、市の設置許可は不当とする住民監査請求の陳述聴取に元県職員で元市副市長が登場し驚いた人もいたのではないか。市のOBと現職が公式の場でにらみ合ったことになる

▼運命共同体ともいえる元、現職員と考えると異例だが、県職員と市職員というなら、そう珍しいことではない。特に県派遣の市副市長と市幹部らとの関係は対立の歴史とも言える

▼桑名市では県OBの助役が市長と市長選を争ったし、鳥羽市の県OB助役が任期を待たず帰還。熊野市では後継含みの助役が二代続けて解任、帰還。鈴鹿市でも、再任予定の県OB助役の再任議案を「忘れて」議会に提出せず、任期に空白が生まれた

▼法規に基づいて事業を執行する県職員に対し、現実に法規を合わせようとする市職員との行政手法の違いが主な原因だが、後者が整合性に欠け、なれ合いになる傾向があるのは当然

▼元副市長は「市の歳入となるべき自販機収益をスポーツ部局の判断だけで体協に渡した理由が判然としない」と自販機行政の整合性を問題にした。市側は体協からの申請書があることを根拠に、体協が自販機設置を求めていないとする請求は「前提を欠く」

▼市スポーツ課副参事が「スポーツ振興のための収益になると考え許可した」と語っていた。申請書はそのための市の自作自演説もあるが、市は事の白黒の決着を避け、監査委員は市民の請求に対する防波堤という通説に沿い門前払いを求めた形。県市職員の息詰まる攻防とも言える。