伊勢新聞

2019年11月4日(月)

▼英語民間試験の騒動に、かつての業者テストのてんまつを見る。業者テストは昭和期を通じて一世をふうびした民間の高校受験用模擬試験のこと。受験競争激化の元凶とされ、国が利用の禁止を主導。英語民間試験は高校や大学などから延期を要請され攻守のところは変わったが、国、地方、業者の3者が主役であることに変わりはない

▼偏差値を基準にして進路決定に的確な情報を中学校に提供していた。中学校は学校施設を試験会場に貸与し、教師が試験官を務めた。ゆとり教育に向かう世情が癒着関係への批判を高めたが、県幹部が懐から業者テストの分析表を出し「しかし当たるんだよなあ」と言ったのを思い出す。年ごろの子どもがいた

▼それから4、5年後、教育長として「業者テストの結果の提供を行わないよう求める指導通知は全国で初めて」と県議会で答弁することになる。90%以上の中学3年生が受験していた県の代表的業者テストは受験者が減り続け4年前、活動を停止した

▼逆に民間業者に依存しようとしたことが業者テストと英語民間試験の大きな違い。ゆとり教育が否定され、競争が当たり前と認識される社会になったことが背景にある。全国学力テストも復活した。文科相の「身の丈発言」が延期のきっかけだが「それを言ったら『あいつ予備校通っていてずるいよな』というのと同じ」の方だけならどうだったか

▼中学生だった半世紀ほど前、「熟通いはずるい」という意識が子供心にあり、公言する友人はいなかった。機会均等について社会の認識は変わった。変わっていない気もする。