伊勢新聞

2019年10月31日(木)

▼自殺予防週間が終わったと思ったら、差押強化月間が始まる。11、12月の2カ月間。年の瀬に向けて、おどろおどろしい期間が到来した

▼あまたある県の記念週間、月間の中で先行して関連状況、効果を発表するのは差押強化月間だけだろう。9月末現在の自動車税徴収率が10年連続で増加し、記録が残る平成18年度以降で過去最高を更新した。ご同慶の至り

▼滞納対策を強化したのは23年度から。訴訟、差し押さえの積極的活用という方針転換を大きく報じた新聞記事を拡大コピーし、県税事務所の県民相談窓口の各机のガラスの下に相談者に向けて置いていたのがそのころか。脅し効果策は形を変えて引き継がれている

▼強化月間中は車を移動できないように「タイヤロック」を使うというのもその一つだろう。病人の寝ている布団をはがすという落語などでおなじみの酷吏を連想させる。車がなければ身動きできない県特性の中で、ひとたまりもあるまい。低所得者ほどダメージは大きいのではないか

▼「滞納を放置すれば、納税した県民との公平性を欠くことになる」と税収確保課。ごもっとも。だが、公平性という理念は何も徴税に限った話でもない。そのために効果だけを最優先に何をしてもいいとはならないのも、言うまでもない。そちらの努力のあとも併せて発表してほしい気はする

▼徴収率はここ10年間99・8%ほどの横ばいだが、滞納額は前年度比約1億5千万円減の約2億2千万円。平成25年の9億2千万円からは6億円減った。理由はともかく、車の所有者が減ったということだろう。