伊勢新聞

2019年10月29日(火曜)

▼目まぐるしい現代社会で、その最先端を行く通信社の世論調査が辞任して3日後の元経済産業相の是非、というのは間が抜けた気もするが、辞任直後にもかかわらず安倍内閣の支持率は若干増。大臣の首がますます軽くなった

▼公職選挙法などは問題が起きてから調べるのが常だが、香典については頭に刻み込まれている。田村元・元衆院議長がその改正の時、あちこちで「人間としての普通の付き合いもできなくなった」と嘆いていたからだ。公務を優先する立場で、通夜・葬儀に秘書を出席せざるを得ない実情を切々と語ったが、その主張はともかく、香典は本人出席以外問題となることはよく分かった

▼鈴木英敬知事がシャープ派遣社員雇い止めの業種からの献金を県外の災害復旧団体へ寄付するとしたのも公選法が選挙区内での寄付行為を禁じているから。公職者にとって公選法はいわば憲法。菅原一秀元経産相の振るまいは、国会議員の一連の憲法抵触発言に劣らず傍若無人を感じさせた

▼「お中元リスト」なるものも10年前とはいえ、旧態依然を感じさせる。カラ出張の反省から県が虚礼廃止を指示したのは20年前だ。政治家、企業が中元、歳暮の伝統を名目に贈答品を選挙や商売にシステム的に活用したことが背景にある

▼県職員が中元、歳暮を返却し出した。「虚礼廃止の通達により」と添え書きにある。その後の平成14年、労使協働委員会で職員の葬儀に供花もないという苦情が出た。虚礼廃止は分かるが冷た過ぎるというのである。「部局長の交際費から支出できる」という回答だが時世時節である。