伊勢新聞

2019年10月26日(土)

▼県立盲学校、同聾学校の創立百周年記念行事を11月、両校で開く。児童生徒が楽器の演奏や手話の合唱などを披露する。「学習成果を見てもらう機会はなかなかない。どんな勉強をしているかを実感してもらうことで障害のある人への理解を深め、交流の促進につなげたい」と廣田恵子県教育長

▼特別支援教育の目的に「自立や社会参加に向けた主体的な取り組み」への支援が上げられ「適切な指導及び必要な支援」が求められている。県は昨年、障害者差別解消条例を施行させたが、それを生かした教育効果を意識、体感できる発表はない。時期尚早ということか

▼唯一実感できるのは聾学校の手話による合唱だろう。百周年記念行事の目玉の一つ。差別解消条例施行とともに県の手話への取り組みはぐんと進んだ。知事会見に導入。県の各庁舎に手話でのあいさつのモチーフが飾られた。手話の学習と理解は交流すなわちコミュニケーションの促進になる

▼もっとも県が手話言語条例を定めたのは一昨年4月だ。「ろう者にとって声と言うべきもの」として「聴覚障害の有無にかかわらず」相互の人格、個性の尊重、共生社会の実現に欠かせぬと条例は普及の意義を強調する

▼視覚障害者にとっては点字に相当しようが、盲学校の発表に、その学習効果をうかがわせるものはない。意思疎通について、障害者の種別で差別があることを県の取り組みは浮き彫りにする

▼バリアフリー、ユニバーサルデザイン、ダイバーシティーと、共生社会への最先端の概念は変遷しても、落ちこぼれたものはそのまま引き継がれている。