伊勢新聞

2019年10月24日(木)

▼「即位の礼」の22日、台風20号から変わった温帯低気圧の接近で県を襲った大雨は、浸水被害や土砂災害の発生はなく、けが人もなかった。文字通り水をさされることなく、祝賀行事で県内喜びに包まれた。慶賀の至り

▼台風19号で約20軒の浸水被害を出した伊勢市でも神宮宇治橋前で万歳三唱で即位を祝ったが、この日の大雨でもピーク時、伊勢市はじめ7市町で124世帯147人が避難した。被害ゼロというわけではない

▼避難所のカギが開いていなかったり「福祉避難所」運営マニュアルの実用性が伴っていなかったり。避難所生活が数字に表れない高い死亡率になっているとの指摘もあるが、施設整備について、鈴木英敬知事の議会答弁は国任せの印象が濃かった。東京都台東区のホームレス拒否は遠い世界のことではない

▼「天災は忘れた頃にやってくる」という物理学者・寺田寅彦の言葉が災害への備えとして過去多く語られたが、今は「文明が進むほど天然の暴威による災害は鮮烈の度を増す」の方に説得力が増す。電力・通信の被害と混乱が裏付け、大きく見れば温暖化による影響を予言しているとも受け取れる

▼足元では、被害の大小で注目度や助成策に差が出てくる傾向が懸念される。大雨時に冠水しやすい高架下のくぐり抜け道路「アンダーパス」を県、四日市市、四日市南署が点検し緊急時の対応を確認したのは昨年5月。不意を突かれた先月の大雨で、いなべ市のアンダーパスに入った中型トラックが水没し、運転手が死亡した

▼教訓をどう生かすか決意も新たにしたい新時代である。