2019年10月20日(日)

▼三重県警に科学捜査研究所があることを実感したのは昨年、本紙が研究員の人物紹介をしていたから。見出しが人気テレビドラマ『科捜研の女』をもじっていた。ドラマ主演の沢口靖子さんが科捜研への応募者が増え、京都府警から感謝されたとインタビュー番組で語っていた。ドラマと違い「一日で解決することなどない」と職員から言われたとも

▼「科学捜査研究技師採用選考試験(物理・化学)の申込みは締め切りました。多数のご応募ありがとうございました」は、昨年の三重県警ホームページ。16倍とも17倍ともいわれる競争率だ。検事任官希望者も、木村拓哉さん主演の『HERO』で増え「私でもやりたくなる」と津地検の次席検事。『海猿』人気で希望者が急増したと、伊勢志摩サミット警備の海上保安部幹部

▼サスペンスドラマの主流、刑事ドラマに触発されて警察官に応募した人も多いのだろう。現代社会ではいささか青臭さを感じるほど素直な正義感、不正を憎む気持ちをあらわにする警察官に多く接した

▼ハリウッド映画が特撮中心に派手なアクションを売り物にしていく傾向に「刺激をエスカレートさせて、将来どうする気か」と批判的だったのは脚本家の山田太一さん。日本の刑事ドラマも単純な正義感は特に男性主演ものから姿を消した。犯罪者と「悪」を競うドラマも珍しくない

▼伊賀署の21歳の巡査が空き巣未遂容疑で逮捕された。2年に満たぬ勤務歴では前代未聞ではないか。組織の中で何があったかというより、なぜ警察官を志したのかの方が気になる。正義感からではあるまい。