伊勢新聞

2019年10月12日(土)

▼菰野町の小一男児が母親の内縁の夫から暴行を受けて腎臓を損傷した事件で、県の担当者は県議会常任委で「私たちに声が届かなかったケース。これからの課題だと思っている」

▼「児童相談所に相談がなかったという」との前ふりをした質問を受けてだろうが、複数の県議が「氷山の一角」と言い、住民が「毎日のように子どもの大声」「週に2、3回、子どもの泣き声」を聞いたと本紙が報じている。「これからの課題」とはまた悠長な

▼県が児童虐待で検証委員会を発足させたのは、3件の死亡事件を含めて4回。うち最新のブラジル国籍女児の事件では、委員長の村瀬勝彦弁護士が「児童の状況を誰も把握していなかった現実がある」

▼実際は、姉が北勢児相に保護されていたのだが、女児の声は届かなかった。平成24年、0歳児が炎天下のパチンコ店駐車場で死亡した事件も、北勢児相は乳児院からの一時帰宅を認めた間の出来事。父親や転院前の医院の言葉をうのみにし、家庭の状況を自ら確認せずに許可したためと検証委は報告している

▼同年、母親に殴り殺された0歳児の場合も、相談の蓄積の中で、まさか死亡させるようなことは、という判断だった。2年前の鈴鹿市の虐待重篤事例を含め、事件発生のつど関係機関の連携の悪さが指摘されている。声が届かないケースばかりだ

▼年々増加する児童虐待相談件数について、県は原因を虐待死事件などの影響と分析している。自ら虐待の警戒マニュアルを作成し、県民に情報提供を呼びかけたからではない。「これからの課題」とは悠長な、と嘆く次第。