伊勢新聞

2019年10月7日(月)

▼NHKの取材方法を「まるで暴力団」と非難した鈴木康雄日本郵政副社長は翌日の野党ヒアリングでも「(NHKは)取材に応じれば(情報提供を呼びかける)動画は消すと言った」と意気軒高。NHKの放送総局長は「丁寧に取材交渉したと認識。改めて確認したがそのような事実はない」と悪びれる様子はない

▼鈴木副社長は動画の「詐欺まがい」の表現に「許せない」とし「まるで暴力団」と発言した。「詐欺まがい」は「クローズアップ現代+」でも使われている。「詐欺まがい」と「まるで暴力団」―どちらも反社会的存在に見立てて相手を批判する。売り言葉に買い言葉。売ったのはNHKである

▼昔「脅しまがい」と表現して当事者をカンカンに怒らせたことがある。開発行為で発生した土砂が河川に流れ込むことに対し、一部の内水面漁協が抗議し、協力金などを支払わせていたことの報道の中だった。国は公共事業でのこうした行為を厳禁していたが、県は開発業者に地元との話し合いを指導。実質黙認していた

▼「自分らは暴力団だというのか」という県内水面漁協連合会理事らの抗議に「そうは言っていない」と反論したが、恐縮もした。「まがい」とは、そう反論できる逃げ道を用意して相手を決めつける都合のいい言葉ではある

▼経済雑誌が企業の批判記事に「次号続報」と書けば脅迫とみなされることもあると前に書いた。実際は続報されないことが多い。何らかの交渉の結果だろう。金銭的話がまとまったか。間に大物でも入ったか

▼なぜと聞いたら取材が間に合わなくてと答えたに違いない。